「口から食べる」をあきらめない

飲み込む力だけの判断で食べることを禁じてしまう現実

月刊誌・文藝春秋の2017年5月号は 「食と薬の常識が変わった」 を大特集しています。

その大特集の中に「口から食べるのをあきらめない」という文章が載っていました。

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執筆者はNHKのドキュメンタリー番組 “プロフェッショナル” でも紹介されたことがある看護師の小山珠美さんです。

小山さんが20年間に向き合った、食べることが難しいとされた患者は八千人。そのうち七千人は食べられるようになったそうです。

文藝春秋の中で、小山さんはこう書いています。

「人が食べられなくなるのには、さまざまな原因があります。飲み込みや口腔機能の低下はもちろん、食べる意欲や認知機能の問題、あるいは食べる姿勢や食べさせ方がうまくないことも深く関係しています。

でも、こういったことを包括的にみてどうすれば改善できるか、ほとんどの医療者は考えていません。

特に飲み込む力だけを検査(レントゲンでのVF検査や、内視鏡でのVE検査)して、機能に問題があると食べることを禁じてしまう。これは大変危険なことです。

まだ、食べる力が残っている人たちから食べる力を奪ってしまうことになりかねません。

食べられるかどうかは、飲み込む力だけで決まるわけではありません。

食べられなくなった人を食べられるようにするには、他の要素もみて、改善する必要があります。」

もっといろいろ要素を見て、食べること禁じるのかを判断する必要があるようですね。

食べさせようとする努力が奨励されない現実

食べられない人を食べさせることで多少の診療報酬は出ますが、胃ろうなどの人工栄養の方が診療報酬が高く設定されているため、食べさせようとする努力が奨励されない現実が、いまの日本の医療システムの中にはあります

この現実にチャレンジを始めた病院があります。

小山さんの故郷・熊本にある桜十字病院です。

桜十字病院では、小山さんのノウハウや技術を全面的に取り入れて、六百四十一床ある病院全体で口から食べるサポートを始めました。

この病院の画期的なことは 「クチタベ入院」 という、食べられないということだけでも、入院させて食べるサポートを始めたことです。

食べられない状態を食べられるようにしても、満足な診療報酬は得られないので、こんなシステムのある病院はほとんどありません。

ここでは安田広樹医師がスタッフをけん引し 「KTバランスチャート」 をフルに活用して、食べられるようにサポートしているそうです。

今のように、少しでも誤嚥があると食べさせないという風潮が続くと、日本は食べられない高齢者ばかりになってしまいます。

桜十字病院のチャレンジはとても貴重ですね。

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